「プロアクティブ人材」に関する調査結果とビジネスリーダーへの提言
2024年、日本総研が実施した調査により「プロアクティブ人材」の重要性が改めて浮き彫りとなりました。この調査では、20,400人の企業勤務者を対象にプロアクティブスコアが測定され、その結果、日本の企業勤務者の平均スコアが2.89と中間値である3.00を下回る結果となりました。これは、受身・他律的な働き方が広まっていることを示しています。
年齢別のプロアクティブスコアの傾向
今回の調査では、**年代別のプロアクティブスコア**も分析されました。その結果、20代から50代前半にかけてスコアが低下し、50代後半から回復する傾向が明らかになりました。特に、45歳~59歳の層が全体平均を下回っており、これはビジネスリーダーにとって注意すべきポイントです。入社当初は活発に仕事に取り組む部下が、年を重ねるごとに受身的になる現象は、多くのリーダーが目にしたことでしょう。
プロアクティブスコアの低下とその影響
45歳~54歳が**日本企業におけるボリュームゾーン**であるため、この世代のプロアクティブスコアが継続的に低下することは、日本企業全体の競争力に深刻な影響を与える可能性があります。一方で、この世代のプロアクティブスコアが向上すれば、企業の成果創出が飛躍的に増加することも期待されます。
中堅層のプロアクティブ度が低下する理由
なぜ40代後半から50代前半の層のプロアクティブ度が低いのでしょうか。その一因として、**年功序列的な人材マネジメント**の存在が挙げられます。伝統的な日本企業では、若手の処遇が平等である反面、30代・40代になると昇格・昇進の差が大きくなり、キャリアの終点が意識されるようになります。将来のキャリアに対する諦めが、プロアクティブ行動の低下につながっていると考えられます。
役職別のプロアクティブスコア
データを見ても、役職に就いている40代後半から50代前半の社員は、スコアが全体平均を上回っています。特に役職に就いていない同世代の一般社員に比べて、スコアが高いことが確認されています。年上の部下をマネジメントする際に、その難しさを経験した方も多いでしょう。リーダーの中には、「年上の部下が活動に消極的で、指導が難しい」という声があるのも事実です。
非管理職層のプロアクティブスコアの向上に向けて
では、40代後半から50代前半の非管理職層のプロアクティブスコアを引き上げるためにはどうすれば良いのでしょうか。調査によると、プロアクティブ行動は「革新行動」「外部ネットワーク行動」「組織内ネットワーク行動」「キャリア開発行動」の4つで構成されていますが、対象年代では革新行動を除く3つの行動が相対的に低いことが示されています。
外部ネットワーク探索行動とキャリア開発行動の重要性
特に、外部ネットワーク探索行動とキャリア開発行動の促進が、プロアクティブスコアの向上に寄与する鍵となります。組織に長くいる中堅社員は、組織内の昇進や収入に関する価値観が強く、新たな価値観への転換が求められています。彼らにとって、所属組織外の人々との交流や、自身のスキルを社会に役立てる方法を見つけることが重要です。
マインドセットの転換がキー
プロアクティブ行動の変化を促すためには、管理職の**マインドセット**が重要です。調査によると、部下の行動が変わると信じる管理職は、ネットワーキングや新たな挑戦を奨励する傾向があります。一方で、変わらないと考える管理職は、部下のプロアクティブスコアの低下を助長する可能性があります。
積極的な環境作りの必要性
具体的には、周囲の社員との協力やネットワーキングを奨励し、本人の能力に+αの業務を与えることが有効です。特に、非管理職層への具体的な働きかけを進めるには、「部下の行動が働きかけによって変えられる」というマインドセットの浸透が不可欠です。
次回は、個人単位のプロアクティブ行動に続き、**チーム単位のプロアクティブ行動**に焦点を当て、どのように企業全体の成果に好影響を与えるかを探ります。
著者情報: 半田翔也は、株式会社日本総合研究所のリサーチ・コンサルティング部門マネジメント&インディビジュアルデザイングループのコンサルタントであり、組織・人事領域の専門家として活躍しています。