ミドルシニア層の雇用機会拡大に向けての企業の取り組み
2025年4月から、**65歳までの雇用義務**に加えて、**70歳までの就業機会**の確保が企業にとっての努力義務として定められます。しかし、企業は同時に、黒字企業による早期退職募集の増加など、ミドル・シニア層の雇用にどう対応すべきか悩んでいます。これに対し、「はたらいて、笑おう。」をビジョンに掲げるパーソルグループが主催した勉強会『データで読み解く。企業におけるミドル・シニア人材の活用実態』では、ミドルシニア層の採用と活用の課題について議論が行われました。藤井薫氏(パーソル総合研究所上席主任研究員)と石井宏司氏(パーソルキャリアのゼネラルマネジャー)が登壇し、最新の調査結果をもとに企業が取り組むべき具体策を提示しました。
50~60代社員の雇用状況を探る
まず藤井氏は、**50~60代社員**の現状を分析しました。人手不足が叫ばれる中で「正社員の人手不足感」において、50~60代の社員は若い世代と比較して「やや過剰」と感じる企業が多いことが明らかになりました。これは、50~60代の正社員の割合にかかわらず共通で、社員のモチベーションが低下していることや、生産性が期待に応えられていないことが背景にあると指摘しました。
ミドル・シニア世代の処遇に関する現状
藤井氏は、60代社員の処遇に関する社内制度についても説明しました。調査によると、60代社員の処遇を年齢基準で見直す企業が**8割超**に達し、年齢が上がることで年収が下がるケースが目立ちます。特に、年収が下がっても業務内容が変わらない状況が半数以上で見受けられ、モチベーション低下の原因となっていることがあらわになりました。
ミドルシニア世代への具体的な施策
さらに藤井氏は、ミドル・シニア世代の人材活用のための提言を行いました。よく見られる「管理職または管理職相当レベル」の人材過剰感と異なり、「高度専門職レベル」に対する需要は多く、約7割の企業が人材不足を感じています。これに対し、**適材適所**で60代の高度専門職を配置することで、社員のモチベーションと生産性を向上させることが可能であると語りました。
ミドルシニアの転職動向
後半、石井氏は**ミドルシニア層**の転職市場について議論しました。転職サービス「doda」では、新規登録者数が増加しており、その理由としては昇給の見込みが低いことや、会社に対する不信感が挙げられます。特に、昨年同時期と比較して急伸している業種として「人材サービス」「メーカー」などが取り上げられました。
企業に求められる課題解決策
企業の側から見ると、「賃金や賞与の引き上げ」や「働きやすい環境作り」が人材確保につながるとされています。企業が設ける先進的な制度として、「年齢に関わらずボーナス」を提供したり、特別な待遇を導入することが重要であると強調されました。また、働き方の多様性をサポートするために「介護休暇」や「時短制度」などの整備が求められています。
ミドル・シニア世代の雇用ニーズと企業の対応
ミドル・シニア層の活用は企業にとって必然的な課題ですが、それを実現するための施策は進んでいないのが現状です。藤井氏や石井氏の指摘を受け、まずはこの世代が置かれている現状を正確に把握し、それに応じた対策を講じることが企業の責任であると言えるでしょう。