昇給したのに手取りが減る理由とは?具体的なケースを解説
「昇給したのに手取りが減ってしまった」という話を耳にしたことはありませんか?あなたも「本当にそんなことがあるの?」と疑問に思うかもしれません。この現象は実際に起こり得るもので、いくつかの要因が影響しています。今回は、昇給したのに手取りが減るケースを具体的にシミュレーションしながら解説します。
昇給による手取り減少のメカニズム
昇給をしても手取りが減ってしまう場合、主な原因としては税金や社会保険料の増加、各種控除や手当の廃止などが考えられます。こちらでは、具体的なケースを見ていきましょう。
ケース1: 社会保険料の増加
昇給した際に最も影響を受けるのが、社会保険料の増加です。昇給によって所得が増加すると、社会保険料が計算される「標準報酬月額」が上がることにより、より高い保険料を支払うことになります。これは、給与がわずかに増えただけでも、保険料等級が上昇する可能性があるためです。
シミュレーション: 昇給前後の手取り比較
- 昇給前の月収: 30万9,000円
- 昇給後の月収: 31万円
- 結果: 手取りが1,522円減少
この場合、主な要因は社会保険料の増加です。社会保険料は通常、収入の約15%が差し引かれるため、昇給によって等級が上がると数千円を超えることがあります。特に、昇給時期について、社会保険料は毎年4月から6月の給料を基に決定されるため、この期間に昇給をすると、その後の保険料が増加します。
ケース2: 住民税の増加
住民税に関しても、前年の所得に基づいて計算されるため、昇給が影響する場合があります。具体的には、前年に昇給した場合、住民税が今年の6月から増加することになります。このため、前年と同じ給料の額でも、先年度の住民税が引かれるのに対し、今年は昇給後の税額が引かれるため、手取りが減少するのです。
特に、社会人2年目の際には、住民税の変化を強く感じることがあります。社会人1年目には前年の所得がないため、住民税が引かれず、2年目に新たに税金が引かれることで、その影響が顕著になります。
ケース3: 控除や手当の減少
また、昇給によって控除や手当が減少してしまうケースもあります。たとえば、配偶者控除や配偶者特別控除には所得制限があるため、合計所得金額が特定のラインを超えると減額・廃止されることがあります。これによって課税所得が増え、税金が多く引かれることで手取りが減少してしまいます。
具体的には、配偶者控除は合計所得が900万円を超えると減額され、1,000万円を超えると適用されなくなります。また、企業によっては「住宅手当」や「家族手当」が所得制限付きで設けられていることがあり、昇給によってこれらの手当が廃止されれば、手取りが減る原因となります。
ケース4: 管理職昇進後の残業代支払い停止
さらに、管理職になることによって昇給しても、残業代が支給されなくなることがあるため、手取りが減少することもあります。労働基準法では、管理監督者とみなされる場合、残業代や休日手当を支払う必要がなくなります。
たとえば、管理職に昇進し役職手当が支給される一方で、残業代がなくなることで、実際の手取りが減少することもあります。具体的には、月額給料が5万円上がったとしても、残業代が8万円あった場合、実質的には3万円の手取りが減少することになります。
まとめ: 昇給による手取り減少に注意
昇給すれば必ず手取りが増えると思われがちですが、実際にはさまざまな要因が絡んでくるため、注意が必要です。社会保険料や税金、控除、手当の変化などの仕組みを理解しておくことで、予想外の手取り減少に戸惑わずに済むでしょう。したがって、昇給やライフステージの変化があった際には、ぜひ自分の家計を見直してみることをお勧めします。